埼玉県富士見市の内田洋一さんは、それまでのお住まいが老朽化したため、1年程前に木曾檜を使った住宅を新築した。構造材のほとんどに木曾檜を使っている。
内田さんご一家は住宅を建て替えたいと考えていたが、どんな会社でどのような家を建てるのか考えあぐねて、なかなか腰があげられない状態だった。
実は奥様のちづるさんの実家は建具職人で、小さい頃からヒノキの良さはよく聞かされて育ったという。「家を建てるのなら、ヒノキが良い」ということを、ことあるごとに聞かされたという。
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木曾檜の家に満足そうな内田さん ご一家。 | 和室は、柱などあらわしの部分も すべて木曾檜が使われた。 |
一方、近くの住宅展示場で木曾檜を使った住宅を目にしたご主人の洋一さんは、その魅力にとりつかれ、すぐに木曾檜の家にすることを決断したという。基礎の部分などがわかるように展示され、耐震性などがしっかりしていることがわかったし、さらに展示されていた木曾檜材の年輪が非常に緻密で、耐久性をもっていることに納得した。地下での勤務が多い仕事がら、家にいる時にはほっとする安らぎがほしい、と考えていた洋一さんにとって、木曾檜の家はまさに求めていたものだった。「木曾檜は高価なもの」という先入観があったが、実際にはそれほどは高くならなかった。
この家に移ってから、茨城沖を震源地とする震度4の地震があったときも、「近所の人たちはすごく家が揺れたような話をしていましたけど、うちはまったく危険を感じませんでした」ということだ。木曾檜の家は丈夫で長持ちする−−−というのが、内田さんご一家が木曾檜の家を選んだ最大の理由だった。そうした一方で、家ができてから、思わぬところで別の意味での基礎檜の良さを知ることになる。
母親で87歳になる冨士江さんは、激しい咳に悩まされていた。昼夜を問わずひっきりなしに咳が出たけれど、医者に通ってもはっきりした原因はわからなかった。おそらくは新建材などの住環境によるところが大きかったのではないか、と洋一さんは言う。
この家に引っ越して数日後、ようやく落ち着いてお茶でものもうか、という段になって冨士江さんが「不思議なことが起こったんだよ。咳が出なくなったんだよ」と話し出したという。それ以来、咳はほとんど出なくなった。はっきりした理由はわからないが、この家に住んだことで環境が改善されたということだろう。
木曾檜の家は一種のあこがれでもあり、ステータスでもある。洋一さんは、床の間にある和室に入るととヒノキのにおいが心地よいという。3人のお子さんはすでに成人されているが、この家にお住まいで「よい家ができたね」と満足げだという。
近年は各研究機関などで、ヒノキの良さ、木の良さについて科学的な研究が進んでいることを知り、「ほんとうのヒノキの良さが、科学的にもわかってきて、うれしい」と内田さんは話してくれた。
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縁側を作ることは奥様の注文 だった。 | 床の間もきちんと設けることに こだわった。 |